法科大学院を修了しても司法試験に合格できないと就職が厳しくなる

法科大学院修了は司法試験の受験資格ですので、法科大学院を目指すほとんどの人は弁護士などの法曹資格の取得を目指し、大学院修了後は弁護士などの法律の専門家として働くことを望んでいます。しかし、現実は厳しく、法科大学院修了者の司法試験合格率は半数にも満たない状況です。

司法試験の受験資格を失う人も多い

以前の司法試験の制度では、大学卒業後何度でも受験できました。司法試験に合格すると法曹への道が拓けるため、何度不合格になってもチャレンジする司法浪人もたくさんいたものです。しかし、司法浪人として5年も10年も経過して、最終的に司法試験に合格できずにあきらめた時に、年齢的に就職が難しくなっていたという人が多数出ました。

そのため、新司法試験の導入にあたって、司法試験を受験できる期間が受験資格取得から5年以内となり、その間に3回不合格になった場合は受験資格を失うと改められたのです。ただ、このルールにより司法試験の受験資格を失う人が多数生まれ、現在では、5年間に5回以内で合格しなければならないというルールに変更されています。それでも、受験資格を失う人は多数いるのが現状です。

司法試験に合格できないと就職が厳しくなる

司法試験をあきらめた時点で大半の人は30歳前後になっており、新卒者と比べると、公務員も民間企業も就職が厳しい状況です。なお、法科大学院を修了すれば法務博士という学位を得られますが、これは、研究職を目指すために大学院で法学を勉強した法学博士とは異なります。そのため、法務博士という学位で、大学や研究機関で研究職に就くことも難しいのです。

なかには、法科大学院への再入学や予備試験の受験で法曹資格を取得した人もいます。しかし、そういう人は一部であり、夢破れた人の多くは、運が良ければ民間企業に就職できるか、そうでなければ非正規雇用で食いつなぐかという状況です。

一般企業への就職は可能

このように、法曹資格を取得できなければ、法科大学院を修了しても行き場が見つからないという問題があります。しかし、この経歴をアピールポイントに民間企業に就職することは可能です。法務博士の学位があれば、法律に関して専門的な知識を身につけていると判断されるため、決して就職で不利になるというわけではありません。法務部では重宝されるでしょう。

ただし、新卒者と比べて年齢が高くなるため、そこがネックになることはあるでしょう。年齢的な不利をカバーするには、一度や二度の失敗を引きずらない数を打てるタフさが必要です。

法科大学院に将来性はあるのか?厳しい現状と志願者減少の理由

法科大学院の現状ははかばかしいとは言えません。法科大学院への志願者数も法科大学院の数自体も、ともに減少しています。最も多い時に全国で74校の法科大学院がありましたが、そのうち、2018年度までに35校が学生募集を停止、または閉鎖となっています。横浜国立大学や、立教大学、青山学院大学といった有名私立大学も撤退を決めました。もはや法科大学院に存在意義はないのでしょうか。

学生が集まらない法科大学院

多くの法科大学院が学生の募集を停止したり閉鎖を決めたりしたのは、学生が集まらないことが大きな理由です。2004年に創設された法科大学院は、2005年では志願者が41,756人、入学者が5,544人もいました。それが2018年度は、志願者が8,058人、入学者は1,621人までに減少し、志願者は当初の1/5、入学者は1/3を切るまでになっているのです。まだ存続している法科大学院も学生数の減少が深刻で、定員割れも目立ちます。

低い司法試験合格率

なぜ法科大学院の人気がここまで下がったのかというと、それは法科大学院を修了しても司法試験に合格できるとは限らないからです。2006年、初年度に法科大学院に入学した修了生の司法試験合格率は、わずか48.3%にとどまりました。日弁連は合格率70%を想定していましたがそれを大幅に下回った形です。

その後も合格率は下がり続け、2018年に実施された司法試験では、法科大学院を修了した人の司法試験合格率が24.7%にまで下がっています。なかには、合格率が一桁や合格者数が0人の大学院もあります。法科大学院の濫立により、法曹の質が下がるのを恐れた法務省が合格者数を抑えたとも言われているようです。

予備試験制度の導入

また、2011年に、法科大学院に進学しなくても司法試験が受験できる予備試験の制度が導入された影響も大きいです。これまでは、大学の法学部と法科大学院で少なくとも6年間学ぶ必要がありました。司法修習の期間も入れると、大学入学から法曹資格を取得するまで8年弱かかることになります。

一方、予備試験は受験資格が不問で、その気があれば高校生でも受験可能です。長い期間を経ても司法試験に合格できるとは限らない法科大学院進学のルートより、大学入学後、すぐに予備試験を目指し、合格できなかった時に法科大学院を選ぶという学生が増えています。

法科大学院生も司法試験が受験できるようになる

国は、この状況を改善しようと新たな法律を可決しました。2020年から法曹コースが創設され、法科大学院に籍を置いている人も司法試験が受けられるようになります。大学入学から最短6年で法曹資格が得られることになるのです。

法科大学院生の1日の過ごし方とサマークラーク(インターン)について

法科大学院の学生はどのような1日を過ごしているのでしょうか?大学生といえば勉強よりも遊びがメインの人が多いというイメージですが、法科大学院生は確固たる目標を持って入学してきた人たちですので、寸暇を惜しんで一日中勉強に明け暮れているという人がほとんどです。

法科大学院生の1日

一例としてある法科大学院生の1日の過ごし方を見てみましょう。講義は朝の9時ごろから始まりますが、8時には登校して自習室で講義の予習・復習を行います。1日の講義の数は、1コマ90分の講義が2コマから3コマが平均的です。講義中はもちろん講義に集中し、その合間も前後の講義についての予習・復習に励みます。

学校が終わっても、午後10~11時まで自習室に残って勉強を続けます。そのため、帰宅は深夜になることも多いです。帰宅しても、翌日の講義の準備が終わっていない場合はさらに勉強を続ける日もあります。

土日・祝日に講義はありませんが、それでも登校して自習室で勉強です。気分転換に仲間と雑談することはあるものの、休日も勉強一色の生活であり、テスト期間にはさらに熱が入ります。

法科大学院生は驚くほど勉強している

法科大学院に入学する人の多くが社会人としての経験を持っていますが、社会人として長時間働くことに慣れていた人でも、法科大学院では自分でも驚くほど勉強していたという人が多いです。

法科大学院生の多くが司法試験合格を目標としていますが、大学院の講義では実務系を重視しており、必ずしも司法試験の準備に直結するものではありません。そのため、講義の準備のほか、独力で司法試験の対策を行う必要があります。

夜間コース生はさらに忙しい

法科大学院には夜間コースもあります。夜間コースの学生は、日中フルタイムで働き、夕方から講義を受け、その後、深夜まで講義の予習・復習や試験勉強を行っています。土曜日は、日中は朝から夕方まで講義で、夜も自習室で勉強というふうに勉強漬けの一日です。日曜日は仕事も講義も休みですが、仕事の片付けや準備、講義の予習・復習などがあるため、ゆっくり休めるという人はほとんどいないでしょう。

司法試験の後はサマークラーク

司法試験が終われば法科大学院生も勉強から解放されると思うかもしれませんが、法律の専門家を目指すほとんどの人は、法律事務所でサマークラーク(インターン制度)として実務経験を積みます。サマークラークは弁護士の仕事を直に見ることができる機会であるともに、就職に直結する重要な経験です。そのため、貪欲に学ぶ姿勢はここでも継続します。

法科大学院に入学するための必要な条件や試験の内容

法科大学院に入るには、まず法科大学院が実施する入学試験を受験する必要があります。ただ、各大学院によって入試の状況はさまざまです。ここでは概要を紹介しましょう。

法科大学院の受験資格

法科大学院の入学試験を受験するには、原則、大学を卒業している、もしくは、卒業見込みであることが条件ですが、法科大学院によっては飛び級制度を採用しているところもあります。3年以上大学に在籍して優秀な成績を収めていれば、大学を卒業せずとも法科大学院に入学することが可能です。

また、法科大学院によっては、独自の基準で個別に審査して、大学を卒業していない者にも受験資格を認めてくれるところがあります。

入試内容

入試の内容はさまざまですが、基本的には書類による第1次選考を行い、その合格者に対し、未修者コースでは小論文試験、既修者コースでは法律科目に関する論述試験を行います。また、面接試験もあり、これらすべてを総合的に判断して合否を判断するというところが多いです。

適性試験について

なお、これまでは、法科大学院の受験する人は、各法科大学院が実施する入学試験の前に、適性試験を受験しなければなりませんでした。大学入試でのセンター試験のような位置づけの試験でしたが、現在は必須ではなくなり、平成30年度は試験も実施されませんでした。財団法人・日弁連法務研究財団によると、今後は実施の可否を検討して決定するそうですので、財団のホームページで最新情報をチェックしておきましょう。

語学力の証明書が必要なところも

法科大学院によっては、出願の際に外国語の運用能力を証明する書類を提出しなければならないところもあります。英語なら、英検、TOEIC、TOEFLなどをあらかじめ受験し、出願までに成績証明書を取得しておきましょう。なお、これらの検定試験の成績証明書は、出願までの2年以内に発行されていることが条件となることが多いです。

また、大学院によって、既修者コースの受験対象者に、財団法人日弁連法務研究財団の実施する法学既修者試験を受験させるところもあります。詳細は各大学院によって異なるので、入学希望の大学院に問い合わせてください。

社会人枠もある

社会人を対象とした特別枠入試を実施するところもあります。ただ、その条件は各大学院によってさまざまで、大学卒業から一定期間過ぎた人であれば誰でも出願できるところもありますし、公認会計士や司法書士などの資格取得者や企業の法務担当経験者に限るというところもあります。詳細は各大学院に問い合わせてください。

法律家を目指す人たちの第一歩となる法科大学院

司法制度改革の一環として、2004年に創立されたのが法科大学院です。一般に「ロースクール」と呼ばれる法科大学院ですが、具体的にどんな学校なのか詳しくない方も少なくないでしょう。そこで、ここでは法科大学院とは何かということについてお伝えします。

法科大学院とは

法科大学院とは、弁護士、裁判官、検察官など法曹の人材を養成するために専門の教育を行う大学院です。少人数制での専門教育を前提としており、双方向授業や体験学習、実務研修など、密度の濃い授業を行っています。また、研究者のみならず実務家も教壇に立ち、理論だけでなく実務をバランスよく習得できるように考えられているのが特徴です。

社会人が学べる教育機関

法科大学院では、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが学べるよう、法学を過去に学んできた人たちだけでなく、これまで法律にはまったくの門外漢だった人も学べるように、法学未修者を対象としたコースも設けられています。社会人にも門戸が広く開かれているのが大きな特徴です。法学部以外を卒業したものの、社会に出て働くうちに法律を専門的に学びたくなった人たちがたくさん学んでいます。

3年コースと2年コースがある

法科大学院には、法学未修者を対象とした3年のコースと、大学の法学部ですでに法学を学んでいる人たちを対象にした2年コースがあります。3年コースが標準コースです。このコースでは、憲法、刑事法、民法、商法、行政法など、法学の基本科目を初歩の段階から一歩ずつ身につけていき、法曹としての素養を作ることを目的としています。法学部出身者でもこのコースに入学可能ですが、その多くは法学部以外の出身者です。

2年コースは法学既修者コースと呼ばれています。おもに法学部の出身者が選ぶコースですが、法学部出身者以外でも、法科大学院が実施する基本科目試験において合格することで入学可能です。

修了すると司法試験の受験資格が得られる

法科大学院とは法曹としての素養を固めるための養成機関であるため、課程を修了すると司法試験の受験資格が得られます。それだけに、修了認定を受けられるのは一定の成績を収めたと認められた者だけです。

つまり、司法試験を受験するレベルに達しなければ、法科大学院を修了することはできません。司法制度改革の一環として、法曹の専門性をこれまで以上に強化するために創設された教育機関ですから、修了認定が厳しいのは当然でしょう。法律家を目指す熱意に燃えた人たちが、第一歩を踏み出すための大学院なのです。